4 .1 揺れ
Q:揺れを感じるか? 船酔いするのでは?
(1)揺れ(船酔い)を感じることは通常の波浪状態ではありません。台風や津波などの気象異常時には多少揺れを感じることは有りますが、揺れによる生活(居住)への影響は殆ど有りません。
浮体の深さに比べて圧倒的に大きい長さや幅を有する大規模浮体(メガフロート)では通常の船舶と異なる動揺(揺れ)を示します。つまり、長さや幅が波長に比べて大きく、および浮体が柔構造のため、波浪が相殺、減衰伝搬され、その大きさに比べて浮体の揺れは小さくなります。
・船舶の長さ/深さ比は10倍程度ですが、メガフロートでは20〜1000倍となります。
(2)揺れ(船酔い)の感じ量:加速度
揺れに対する居住性を表す指標の一つに加速度が有ります。加速度を乗り心地の観点から規定しているものとしては、(社)日本建築学会の海洋建築物設計指針が有り、この指針では浮体の居住区にかかわる動揺の許容限界として評価指針を掲げていますが、浮体の使用目的、対象者、上載施設等の条件により許容値は大きく変化するので今後の調査、研究が必要であるとしています。
例)浮遊式海洋構造物としてのアクアポリス(沖縄海洋博‘75)での、入場者へのアンケートによると浮体の動揺周期が6〜7秒で水平方向0.05m/s2,垂直方向0.03m/s2の加速度を感じるとしており、水平・垂直方向の加速度が0.1m/s2では振動を「はっきり感じる」と回答した割合が50%を越えています。
4 .2 津波
Q:津波対策は?
メガフロートの建設計画に当たっては、設置海域における津波による波浪条件を考慮して、各施設(浮体、係留施設、アクセス)の構造形状、強度を設計し、十分な安全性を確保します。津波遭遇では大きな波高とともに、長周期の規則波が問題となりますが、波浪条件を勘案した強度計算により、浮体の安全設計を行います。特に、津波対策としては、
(1)海水面の上昇・下降による、係留施設との離脱が生じないこと
(2) 流速増加による、係留外力の増加(係留施設への押引力の増加)
を考慮することが、安全設計のポイントになります。
津波についてはシミュレーション計算によって事前に対策を立てることが可能です。沖合いの水深の深い海域での津波は波長が非常に長く、メガフロートは静かに上昇・下降するだけで、影響はほとんどないと考えられます。しかしながら、沿岸に近い海域では波長が短くなり、波高も高まるので、地形によっては影響を無視出来ない場合が有ります。極端に大きな津波の来襲が予想される海域の沿岸域にメガフロートを設置することは難しいかもしれません。
4 .3 火災、落雷対策
(1)火災
火災対策は上載施設、内部空間利用部とも船舶安全法、建築基準法、消防法等の法規に準拠して、安全・消防設備が設置されます。組合では、内部空間利用区画火災による隣接区画の鋼材への火災影響を検討するためのゾーンモデル火災解析プログラム等の火災シュレーション手法を開発しました。このプログラムを使うことで火災に対する安全設計が可能です。
(2)落雷
Q:鋼製(鉄の塊)なので落雷を誘因しやすいのでは?
可能性は有ります。が、避雷針を設けることで全く問題は有りません。
尚、浮体は鋼製ですので、避雷針と浮体の接地は避雷針に最も近い鋼製部分にすればよいので、避雷針の接地は容易です。
4 .4 船舶衝突、航空機墜落対策
(1)船舶衝突
基本は船舶の衝突を防ぐためのの工夫、対策(危険表示、警告浮標等)が処置されます。が、万一の場合については、浮体は多くの区画に分けられた構造となっており、衝突による損傷が部分的で収まるよう、強度安全設計が行われています。
(2)航空機墜落
メガフロートの有力な用途として浮体空港が有ります。
航空機墜落の最悪の状況を想定して、浮体の損傷;規模(変形)、範囲をシミュレートする解析プログラムを開発しました。試算によれば、条件にもよりますが、上甲板構造は大変形するものの貫通までには至らないことが確認されました。 |