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お知らせ

ゴードン・ベル賞のファイナリストに選出

~SRCが参加した高精度流体計算の論文がACMゴードン・ベル賞のファイナリストに選出されました~

ゴードン・ベル賞とは

ゴードン・ベル賞はアメリカ計算機学会(ACM: Association for Computing Machinery)が授与する賞で、高性能計算(HPC: High Performance Computing)の分野における世界で最も権威のある賞の一つです。毎年秋に開催されるHPC分野の国際会議である International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis(SC)にて、スパコン性能の世界一を競うTOP500と共に発表・授与されます。TOP500が連立一次方程式を解く速度などを競うのに対して、ゴードン・ベル賞はより現実の成果、実用的かどうかを重視しているところに特徴があります。

2020年度は、SRCの技術開発部西川技術企画課長を含むグループの「Large Eddy Simulationを使った数値曳航水槽の実現に向けて」と題した論文はファイナリスト6件のうちの一つに選出されました。
他の5件は、材料分野、気象分野、宇宙分野、情報分野の計算でした。ゴードン・ベル賞は、カルフォルニア大学バークレー校のグループの分子動力学と機械学習を組み合わせた計算が受賞しました。

SRCの取組

SRCでは2011年から東京大学生産技術研究所との共同研究を通じて、高度流体数値シミュレーションによる曳航水槽試験の代替に関する技術開発を行っており、これまでに「京」を使って数種類の船型に対して曳航水槽試験との比較を行い同じ精度の計算ができることを証明しています。この「京」を用いた高精度流体シミュレーションは1状態に2日かかっていましたが、さらに計算コードを「富岳」に適した高速のものに改良した結果1時間弱で計算できるまで短縮することが出来ました。
曳航水槽試験では一つの船型で数十種類の状態の試験を行うので、「京」では一連の計測に対応する計算には時間がかかりすぎ本当の意味での曳航水槽試験の代替としての実用化は困難でした。今回の研究で、「富岳」を使うと一連の計算を数日で完了することができることがわかり実用化により近づいたといえます。

今後への期待

この高度流体数値シミュレーションのメリットは曳航水槽試験と比較して検討期間の短縮やコストの低減の可能性が期待できることです。また、高度流体数値シミュレーションでは船の周りの全ての流れの情報が数値的にも視覚的にも得ることが出来ます。このため、これまで曳航・回流水槽試験による船体抵抗やプロペラに掛かる力の計測値だけを見て設計していた船型改良が、より理論的に効率よくできるようになるといったメリットがあります。
今後、温室効果ガス削減のために従来と異なる船型の開発が必要になった場合にも、効果的な船型や省エネ付加物の開発、曳航水槽試験で効果を確認する船型の絞込みなどに高度流体数値シミュレーションの活用が期待されています。既に、この高度流体数値シミュレーションによる温室効果ガス削減のための省エネ付加物の開発に関連した研究を受託しています。
SRCとしましては、高度流体数値シミュレーションの精度に影響する計算格子の生成等についてノウハウを積み重ねており、これからも皆様の高度流体数値シミュレーションを利用したご要望に応えて参ります。

選考対象論文について

論文題目:
Toward Realization of Numerical Towing-Tank Tests by Wall-Resolved Large Eddy Simulation based on 32 Billion Grid Finite-Element Computation
10.1109/SC41405.2020.00007

著者名:
加藤千幸(国立大学法人東京大学生産技術研究所)
山出吉伸・永野勝尋(みずほ情報総研株式会社)
熊畑清*・南一生(国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター)
西川達雄(一般財団法人日本造船技術センター)

*)現所属は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

本件に関する技術的なお問い合わせ先

一般財団法人日本造船技術センター 技術開発部 技術企画課
TEL:0422-40-2824 FAX:0422-40-2827