試験センターでは水槽試験や推進性能・省エネ性能改善のための技術的なアドバイスなどを実施しています。

私たちは、お客様からのご依頼に基づいて「正確な試験結果」を提供することを目指しています。水槽水、計測器、模型は定期的に品質を管理して、実施した試験の結果に納得いただけるよう心がけております。これまで培ってきた水槽試験や模型製作の技術に関する知識・技術をお客様の船型開発に役立てていただけますと幸いです。

1.水槽試験

海上技術安全研究所の試験施設を用いて計測作業のルーチン化による効率的な水槽試験を実施しています。試験結果は、一両日中に速報という形でご案内し、最終的には図面、数値表、模型や試験などの写真を全てまとめた成績書を納品いたします。船型および付加物の開発への利用はもちろんのこと、ISO9000シリーズ取得により、EEDI認証水槽としてもご活用いただけます。最近では、遠方でお越しいただくのが難しいお客様を対象といたしまして、オンラインでの試験立会いも実施しております。

  • 推進性能試験 (抵抗・自航試験、プロペラ単独性能試験)

      推進性能試験は、開発した船舶における主機出力と速力の関係を把握するために必要となる試験であり、当センターでは最もよく実施されている試験です。本試験の結果は、船の主機およびプロペラの決定に役立てていただいております。

    • 抵抗・自航試験

      抵抗試験では、指定範囲内の速度と模型船の抵抗の関係を把握するため、試験速度を数点決めて、船の抵抗値を計測します。その後に自航試験を行ない、模型船に模型のプロペラを取り付けて船の曳航力や推進力の計測結果から馬力推定に必要な自航要素を求めます。それぞれの試験結果をもとに実船における主機出力と速力の関係を推定し、対象船舶が目標とした推進性能を有しているかを確認します。

      また近年では、船の省エネ性能を向上させるために船体や舵に付加物を取り付けることが多くなっており、最適な付加物を開発するために水槽試験を行うことも多くなっております。

      ●抵抗・自航試験の紹介 (SRC NEWS No.79〜82)

      ●船型性能改善のための省エネ装置 (SRC NEWS No.91)

    • プロペラ単独性能試験

      プロペラ単独性能試験(Propeller Open Test , POT)は、プロペラそのものの性能を求める試験です。POT試験機に模型プロペラを取付けて、回転数とレイノルズ数を一定として前進速度を変化させて試験し、単独性能曲線を作成しております。また、ご依頼に応じてレイノルズ数変更試験、4象限試験なども実施しております。

      ●プロペラ単独性能試験 (SRC NEWS No.26~27)

      ●プロペラ4象限について(プロペラの働き (SRC News No.19))

  • 流場・圧力分布の計測

      船体周囲の流場計測に際し、当センターでは、プローブの先端にあいた5つの孔で計測した圧力により流速・流向を計測する従来の方法に加えて、非接触式の流速計測装置であるステレオPIVを活用しております。また、船体表面の圧力分布を把握するために表面貼付型のFBG圧力センサを開発しております。これにより模型を加工することなく簡便に圧力を計測できます。

    • 船体近傍流場計測 (ステレオPIV : Stereo Particle Image Velocimetry)

      ステレオPIVとは、2台のカメラで流体中に散布したトレーサ粒子を撮影した画像により、2次元平面内の速度3成分を非接触で求めることができる流体計測手法です。レーザシート面が計測面となり、レーザーシート面を通過した粒子をカメラで撮影し流場を把握します。

      ●ステレオPIVを使った流場計測 (商品説明動画)

      ●ステレオPIVによる流場計測の実用化について (SRC News No.103)

    • 船体表面圧力計測 (FBG : Fiber Bragg Gratings)

      FBG圧力センサを使用して、従来の手法より簡易に低コストで精度よく船体表面の圧力を計測する方法の開発を進めております。この方法は、光ファイバーによるセンシング技術を用いており、電気や磁気などの外乱に強く、水の中でも容易に計測することが出来ます。当センターでは、株式会社シミウスとの共同研究を通じて、より高精度と高品質のセンサおよび試験法の開発に注力しております。

      ●FBGを使った圧力計測

      ●FBG圧力センサによる船体表面圧力計測 (SRC News No.95,97)

    • 伴流計測試験 (5孔管)

      プロペラ取付け位置に5孔管を設置し、Y-Zトラバーサを連続的に移動させて計測することにより、プロペラ面に流入してくる流れの分布を可視化します。この手法は、プロペラ面以外にも船体近傍や舵位置での流場を計測および可視化することにも利用しております

      ●伴流計測 (SRC News No.28)

    • その他 (2段タフト法、プロペラペイント試験による流場の可視化)

      2段タフト法による流場の可視化

      2段タフト法は、船尾の船体近傍の複雑な流れを可視化する方法の一つです。船体表面の流場を可視化したい場所において、船体表面上および船体表面より10mm離れた位置にタフトを取付け、航走中における毛糸の動きを水中カメラを使って撮影することにより、船尾の流れを確認することが出来ます。船体や舵に取付けた付加物が流れに及ぼしている影響を簡便に把握することが出来ます。

      ●船尾周りの流れ・渦の可視化について (SRC News No.45)

      ペイント塗布法によるプロペラ翼面上の流れの可視化

      模型プロペラの表面にあらかじめ特殊な塗料を塗布した状態で、キャビテーション水槽で試験します。試験後に、塗料の剥がれ方を確認することにより、翼面上に生じている流れを把握することが出来ます。

      ●プロペラ翼面上の流れの観察 (SRC News No.32)

  • 耐航性能・操縦性能試験

      当センターでは、実海域における諸性能を推定するために、以下のような試験を実施しております。

    • 耐航性能試験 (波浪中抵抗増加試験)

      波浪中試験では、規則波中における船の抵抗性能および運動性能を計測し、抵抗増加量や上下揺れおよび縦揺れの無次元値を求めます。正面向波規則波中での抵抗試験を基本としておりますが、不規則波、斜め・横波中における波浪中試験も実施しております。

    • 操縦性能試験 (PMM試験)

      SRCのPMM試験で実施する強制動揺モード

      操縦性能試験は、斜航試験とPMM試験からなります。斜航試験では、代表的な回頭角を与えて船を斜航させた状態で、PMM試験では、曳航する船体に規則的な強制運動を与えた状態で、それぞれ船体、プロペラおよび舵に生じた力を計測します。この2つの試験結果を解析し、実船操縦性能の推定に必要な流体力微係数を求めます。得られた微係数と実船の情報を基に実船のZ試験と旋回試験を計算して求め、本船の操縦性能が、IMO操縦性基準値を満たしているか確認します。

      ●船舶の操縦性能とPMM試験 (SRC NEWS No.22)

  • プロペラキャビテーション試験

    • プロペラキャビテーション試験

      キャビテーション試験では、減圧可能な回流水槽内(キャビテーションタンネル)でプロペラのキャビテーションを観察します。通常、プロペラへの流れ(伴流)を再現するために、プロペラの上流にワイヤーメッシュ(金網)を配置します。これにより実船のプロペラ作動状態を模擬し、さらに水槽内の圧力をコントロールすることで、プロペラ翼面に生じる現象を観察することができます。

      キャビテーション試験では観察の他、写真撮影、スケッチ、変動圧計測などからキャビテーション特性を把握します。

      ●プロペラによる変動圧力について (SRC News No.41〜44)

    • 当センターでは10,000枚/秒の撮影速度で観察が可能となる高速ビデオカメラ(High Speed Video、HSV)を導入しております。これにより、プロペラが一回転中に生じるキャビテーション現象を連続的に観察することができます。

      これに加えて、キャビテーション現象の動画と変動圧力とを同期させて計測するシステムを開発しており、キャビテーションの発生から消滅までの現象と変動圧力の時系列変化の直接的な関係を把握する事ができます。

      ●高速度ビデオカメラ撮影とプロペラ変動圧の同期計測 (SRC News No.102)

  • その他 (風洞試験、浅水影響試験)

    • 風洞試験

      客船やガスキャリアなどの大きな上部構造物を有する船舶の風圧抵抗を模型試験により計測します。本試験では、ターンテーブルの下に検力計を設置し、任意の角度から風が当たっているときの風圧を計測します。模型船を設置する円形台は、360°全方位可動するので任意の角度の風圧を計測する事ができます。近年、GHG削減の観点から帆による性能向上も検討されておりますので、そのような目的にもご使用いただけます。

      ●風洞試験の実施 (SRC News No.80)

    • 浅水影響試験

      船舶が浅水域を航行する場合、推進性能、操縦性能および船体沈下量に影響が生じることが知られています。本試験は、水槽内の水を抜き、水深を浅くして推進性能試験を行ない、水深が推進性能に及ぼす影響を把握します。

      ●浅水域における肥大船型の推進性能に関する実験的研究 (SRC News No.77)

2.模型製作

試験に必要な模型船・プロペラ・付加物は、全て当センター内で製作しております。模型船は、ご依頼いただいた図面を基に製作図面を起こして型を製作し、最後は手作業で仕上げていく確実な方法で製作しております。模型プロペラは、アルミのインゴットをNC切削機で削り出し、完成後に表面にアルマイト処理を施した状態で納品いたします。また、船体に取付ける付加物については、NC切削機の他に3Dプリンタを活用しており、小さな物でも高精度に製作することが出来ます。

  • 模型船

    • 模型船

      模型船は、木材とパラフィンの長所を組合せたパラウッド工法にて製作しています。製作は、鋳物を製造するのと同じようなかたちでパラフィンを型に流し込んで概形を作った後、表面形状をNC切削機で削り出した後、最後は手作業で表面仕上げを行なっています。

      ●模型船製作について (SRC NEWS No.66)

  • 模型プロペラ

    • 模型プロペラ

      キャビテーション試験や自航試験に使用する模型プロペラは、アルミのインゴットを5軸のNC切削機で削り出した後、最後は手作業で仕上げます。その後、表面をアルマイトで処理して完成です。

  • 付加物

    • 付加物

      船体に取付ける付加物は、ケミカルウッドやアルミ材に加えて、最近では3Dプリンタを活用して樹脂で製作しています。近年のEEDI・環境問題への対応から、様々な省エネ付加物を装備した模型船の水槽試験が多く行われています。当センターでは、お客様の要求に見合った様々な付加物模型を製作しております。

      ●3Dプリンタの導入について (SRC NEWS No.93,96)